光免疫療法

光免疫療法の特徴

  • がん細胞に入り易い(1)薬を注射した翌日、光(2)を当て、がんを殺す。
  • 死んだがん細胞から抗原が出て来て、免疫細胞を活性化してがんを殺す。(3)
  • 転移がん細胞だけでなく、診断前の少しのがん細胞を殺し、がんを予防する。
  • リューマチや皮膚病にも効果がある。
  • 痛みや副作用がほとんどない。

(1)がん細胞膜は正常のものと比べ、薬が通りやすい(EPR効果)
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(2)薬は光感性ICG(インドシアニングリーン)をハイブリッドリポソーム製剤に入れ、光は低レベル反応性近赤外線(670nm)を用いる。ハイブリッドリポソームを使っています。
(3)別の場所にあるがん細胞が縮小する(アブスコパル効果)

光免疫療法とは?

▲当院で使用している光装置

光のエネルギーによってがん細胞を殺したり、死んだがん細胞の抗原で免疫細胞を活性化する治療法であります。人の身体には常にがん細胞ができていると考えられていますが、がん患者となるのはその一部で、多くの人はできたがん細胞を自ら消して行くと考えられます。がんになるかならないかは複雑な生体の状態によって決定されています。がんになりそうな時に、又はがんになった時に有用なのが光免疫療法であります。本法は副作用が少なく、効果が期待できますが、身体の深い臓器には内視鏡や腹腔や胸腔鏡を使わなければなりません。しかし、皮膚や身体の表層近くの臓器には効果が期待できます。内視鏡など使わなくてできるのは皮膚、身体表層のリンパ節、血液中の転移を起こすがん細胞などであります。がんのみならず、皮膚乾癬、関節リューマチなどの炎症疾患などにも効果があることが報告されています。

光免疫療法の分子メカニズについて

外部から照射された光は体内で光感受性物質と反応し、活性酸素種(ROS)を生成することにより細胞毒性を示し、がん細胞を殺します。さらに、死んだがん細胞の一部ががん抗原となりがん免疫を活性化して、光照射部位以外の全身でがん細胞を殺すことが可能であります。
活性酸素種(ROS):人が呼吸することで身体の中に取り込まれた酸素の2%はミトコンドリアなどでフリーラジカルとなり、Nitric oxide(NO・)やsuperoxide(・O2)となり、さらにalkoxylラジカル(・RO)、peroxylラジカル(・ROO)や一重項酸素(1O-)に変換されます。これらがROSとしての強い作用をする過酸化水素水(H2O2)、ペルオキシナイトライト(peroxynitrate)や次亜塩素酸(HOCl)となり、細胞膜の脂質を過酸化脂質(・LOO)に変換し、lipid-DNA、lipid-proteinを形成し、細胞の機能異常を来し、細胞を殺す結果となります。

低反応レベルレーザー光線療法(LLLT)の細胞への影響

低反応レベルレーザー光線療法(LLLT)の細胞への影響

▲図1

赤外線(Infrared,IR)の波長は図のように表されますが、近赤外線(NIR)0.8μmにおける温熱効果と0.6~0.8μmで活性酸素を生成するphoto-dynamic(PD)effect(光線力学的効果)があります。後者はミトコンドリアで電子を酸素分子に受け渡す最終段階である複合体IVに働き、ATPの産生を促し、ROSの産生、cytochrome c oxidase(CCO)を抑制するNOの放出が起ります。Ref-1依存性AP-1(c-Fos/c-Jun)、NF-kB、p53、ATF/CREB、HIFなどの転写因子を活性化し、蛋白合成、細胞分裂などを促進します。光の照度と時間に対する複合体IVの活性化との関係は下図のように小さな照度で長時間で活性化を示し、一方、大きな照度では短時間又は小さな照度で短時間で抑制を示す、いわゆる、”hormesis”の現象が見られます。低用量で生物学的プロセスを刺激し、高用量でそのプロセスを阻害する(図1)。